湯灌について

湯灌に含まれているは意味合いとしては大きく分けて「衛生上の観点」と「宗教上の観点」の二つに分けられます。
衛生上の観点というのはご遺体の腐敗については亡くなった時から徐々に進んでしまうもので、体液漏れや出血・皮膚の変色などが起こります。このような事に対する処置は基本的には病院で行ってもらえることがほとんどですが、納棺までの間に腐敗が進行してしまう場合もありますので、最後に湯灌をもって綺麗にする事によってご遺体の変化に対する保護手段のひとつです。
宗教上の観点というのは、湯灌は来世への旅装束を整える為の一環として行われます。現世での汚れともいえる悩みや煩悩などを綺麗に洗い流し、魂も清めて浄化することによって故人が無事に成仏できるようにとの願いが込めて行われます。湯灌時には旅立った後に喉が渇くのを防ぐという意味がある末期の水という故人の口を湿らせる儀式を行う場合もありそれぞれ故人を偲ぶ大切な儀式といえます。
湯灌は必ず必要な儀式というものではありません。病院で亡くなった場合であれば、エンゼルケア(身体の洗浄や容姿を整える処置)をして貰える為、湯灌をしなくても綺麗な状態を保つことができます。湯灌を実施される場合には宗教的儀式を重要視される場合に選ばれることが多いようです。故人の現世での苦しみを洗い流してあげると共に、ご遺族が故人の死を受け入れるための儀式としても有用なものといえるでしょう。

湯灌を実施する際に実際に必要な準備や場所については、状況によって多少変化します。一般的には湯灌で体を綺麗にした後に納棺するケースが多いので、納棺の前に湯灌師によって湯灌が施されます。葬儀社へ依頼することが殆どですので葬儀社が手配してくれ、湯灌にかかる時間は概ね一時間から一時間半程度です。お風呂に入れて体を綺麗にするだけ終わずお湯などの準備・装束を身につけたりした後に納棺へと進みますからある程度の時間がかかります。湯灌は設備が整っている葬祭場や自宅で行い、移動式の湯船などを用いることで専用の設備がなくても実施できますし、ある程度の広さがあれば自宅でも湯灌が可能です。以前は湯灌に使用したお湯は床下に流し日に当たるのを避けるという風習がありましたが、近年では自宅で湯灌を行った場合には事業者が持ち帰って廃棄するケースも多くなってきています。
湯灌の立ち会いについては、元来ですと湯灌は遺族によって行われており現在でも遺族が故人を偲ぶ時間とされる認識がある上、準備などは葬儀社がメインで行い、遺族や親族の方はそのまま湯灌の儀式に立ち合うことが可能です。また立ち会いは必須ではないので立ち会わずとも湯灌を進めることも可能です。
湯灌の際は、逆さ水という方法で温度を調整します。逆さ水とは、通常は熱湯に水を加えていくところを逆に水に熱湯を加えて温度を上げていく方法です。故人にお湯をかける場合も、本来右手でもる柄杓の根元を左手で持つ逆さ手にすることもあります。他にも地域によって流れが異なる場合がありますので、疑問に感じた場合には地域の風習に詳しい方や葬儀社に確認してみると良いでしょう。湯灌が終了すると納棺を行います。納棺の儀式と言われるしきたりで棺に遺体を納めます。この時を故人とゆっくり過ごせる最後の時間と捉えることが多いです。納める前に先ほど紹介した末期の水を行い、故人の喉の渇きを潤した後、装束に着替えたり化粧などで身だしなみを整えたりして準備を進めます。最後に遺体を棺に納め、一緒に副葬品を棺に入れます。火葬に影響が出ない物で故人の嗜好品や写真などを入れることが多いです。

お葬式の豆知識

湯灌の手順について

湯灌の手順については、まず湯灌に使う槽の準備として湯灌の設備がある部屋や移動式の槽を持って湯灌師が自宅へ訪問します。お湯を溜めている間に、身体の硬直を解消するためのマッサージを全身に施し、遺体の肌が見えないように布やタオルをかけて槽への移動を行います。
湯灌師によって湯灌の儀式の説明の後に、お湯を使って遺体を清めます。遺族が参加する場合であれば、足元から胸元へ向かってお湯をかけてあげましょう。お湯は概ね36度~40度前後通常のお風呂よりやや低めの温度にする場合が多いです。髪や顔を洗い顔を剃り綺麗になった後はドライヤーで髪の毛を乾かし最後にシャワーで全身を洗います。
体を拭き終えると着付けと化粧へ進みます。白装束の衣装を身にまとうことも多いですが、故人が好んでいた服を着ることももちろん可能です。着付けと化粧が完了すると納棺へと移ります。

湯灌についての注意点については、湯灌に立ち会う際に服装は平服でも問題ありません。喪服を着た方が良いと考える方もいらっしゃるかと思いますが、喪服はお通夜や葬儀から身につけることが多いです。ただし、喪服で参加してもマナー違反には当たりませんので、お通夜が控えている場合などには喪服で参加することも可能です。
また、遺族以外の方も立ち会うことは可能ですが、亡くなっているとはいえ他人に裸同然の姿を見られるのは心地よいものではありませんから、遺族や親族の方以外の人が立ち会うのは控えるべきとされていますので場合によっては注意が必要です。もし遺族や親族の方以外の方が立ち会いを希望した場合には、遠慮なく断っても問題ありません。湯灌中の部屋に入ったり途中で退出したりすることもマナー違反とはなりませんから、湯灌や納棺は大切な儀式になるので時間を見つけて参加するようにしましょう。また、子どもが立ち会う際は注意しましょう。