仏教と神道の葬儀について

日本で執り行われる葬儀の中で最も多いとされているのは仏教の葬儀です。仏教の葬儀と言っても五十以上ある宗派によってそれぞれ若干の違いはありますが、基本的には故人が所属している宗派の僧侶によって、通夜・告別式・火葬・埋葬という流れで葬儀を執り行うのが一般的です。故人の冥福を祈り次の世へと送り出す儀式を通して、故人は極楽浄土へと送られるという世界観になります。
仏教におけるお通夜は家族や縁者などの近しい方々が集い故人との別れを惜しみながら邪霊から故人を守る儀式です。まだ医療が発達していなかった時代には故人が本当に亡くなったのか確認するのと同時に遺体を動物などから守るために夜通しで見守りが行われていた為に通夜という名前が付きましたが、近年では日をまたがずに半日から数時間程度の通夜を行うケースが増えています。また、近親者だけ呼ぶのではなく告別式等に参列できない一般の弔問客も呼ぶような傾向も増えてきています。通夜の後に行われるのが、葬儀式と告別式でまとめて葬儀あるいはお葬式と言われる事も多くなってきました。葬儀式と告別式は故人が亡くなった次の日に同時に行われる場合が多く、近親者だけでなく知人も交えて行われる追悼の儀式となります。葬儀式の流れや方法は各宗派によってそれぞれ異なりますが、いずれも僧侶の読経や偲びの歌などを通し故人の冥福を祈り次の世へと送り出す儀式が行われます。葬儀式は親族の意向によっては親族のみで行う場合もあり、反対に告別式は知人や友人も交え焼香や献花などを行い故人へ最期の別れを告げる場となります。

神道における葬儀(神葬祭)は日本の各地域で生まれた神道による伝統的な葬儀です。神葬祭は神社の神職により執り行われ、枕直しの儀・納棺の儀・通夜祭・遷霊祭・葬場祭・火葬祭・埋葬祭・帰家祭という流れで進みます。神道においては「死=穢れ」とされている為に神葬祭を行う事で穢れを浄めるという考えになります。穢れを浄め故人の御霊が家の守護神となるよう祈る儀式によって、故人の御霊は家に留まり家の守護神となるという世界観です。
故人の死後に行われる枕直しの儀は親族等の近しい者だけで行われます。具体的には、故人に白い小袖を着せ北枕に寝かせて食料やお酒など故人の嗜好品等を供える枕直しの儀から始まります。命が蘇るようにという願いを込め、末期の水を故人の口元に塗り口元を潤す儀式も行います。その後に祖霊に故人の死を知らせ棺に納め通夜祭を行います。通夜祭とは仏式で言うところの通夜に当たる物になるのですが、焼香や線香は使われず、榊の小枝に紙垂をつけた玉串を捧げます。同時に、故人の御霊を位牌である霊璽に遷し留める遷霊祭が行われます。その後に行われる葬場祭は仏式でいう葬儀式や告別式と同じ意味を持ちます。霊璽となった故人へ最期の別れを行い再び玉串奉奠が行われます。その後に火葬祭・埋葬祭と続くのですが、神葬祭での埋葬は通常だと五十日後に行われる場合が多いです。

お葬式の豆知識

キリスト教の葬儀について

キリスト教には大きく分けてカトリックとプロテスタントの二種類が存在します。キリスト教では、死後に執り行う葬儀だけでなく死直前における儀式も大切にしているのが特徴となり、すべての罪を解放し永遠の安息を得た事を祝うという世界観をもちます。
死後に執り行う葬儀だけでなく死直前における儀式も大切にしていると述べましたが、死の直前にカトリックでは司祭を呼んで神に祈り、今までの罪全てから解放されるよう祈りを捧げます。この際に聖油で顔と両手に十字架をかく場合もあります。一方プロテスタントでは死の前後には牧師を呼び永遠の安息を祈り、聖油は使わずにキリストの血肉とされているパンと赤ワインを口へ含ませる聖体拝領が行われます。カトリックとプロテスタントの場合にも、キリスト教における死は神の元に召され永遠の安息が得られる喜ばしきものとされているので「死」ではなく「召天」と言われています。
死の直後にはカトリックでは聖体拝領が行われ、通夜祭・出棺式・葬儀式・告別式と続き、火葬・埋葬の順に執り行われます。元々はキリスト教に通夜という儀式はありませんが、日本の風習に沿い通夜と同様の儀式が取り入れられる事もあるようです。また、葬儀式では賛美歌や聖書の朗読が行われ、司祭による説教や参列者全員での祈願もあります。キリスト教の埋葬は本来であれば土葬なのですが、日本では土葬は認められていない理由から火葬を行います。プロテスタントもカトリックとほぼ同様の流れとなり、通夜祭と同義の前夜祭、出棺式・告別式・火葬が執り行われます。