葬儀の際に喪主の他に施主という役割の名前を耳にする機会があるかと思います。喪主と施主の違いや役割についてに加え、喪主の挨拶について詳しくご紹介致します。

喪主と施主について

まず先に喪主とは「喪に服する主」という意味で、お葬式を執り行う遺族の代表の事を指します。反対に施主は「お布施をする主」という意味で、お葬式の費用を負担し運営全般を取り仕切る者を指します。喪主と施主が分けて考えられていたのは戦後の法改革で近年では一般的な葬儀の場合「喪主=施主」となる場合が多いので、施主の役割は喪主と同じと考えて問題はないでしょう。近年で喪主と施主が異なるのは、「喪主は故人の子供が勤め、お葬式の費用を故人の配偶者が負担する為施主になる」場合や「社葬で費用を会社が負担する為施主となる場合」などです。
喪主と施主が別々の場合以外では、施主ではなく喪主と呼ぶのが一般的ですので喪主という役割名を耳にする事の方が多いでしょう。ですが、喪主という呼び名は喪に服している期間だけで忌明けの法要からは喪主ではなくなり施主となる為、呼び名も変わります。

具体的な役割

喪主も施主も葬儀において重要な役割を担っています。喪主は葬儀に関する最終決定権を持ちますので「葬儀の形式・日時・費用」に関することを関係者と相談して決定します。故人が亡くなる前に葬儀社を決めていない場合にご遺体の移動を急がなければならない場合などに、病院や施設と提携している葬儀社に慌てて頼んでしまうと葬儀費用が割高になってしまうこともありますので注意が必要です。葬儀当日は、一定の時間内に受付から閉会までを滞りなく済ませなければなりませんし、実務には携わらず葬儀社や手伝いの方に任せる事になりますので事前に役割分担や式の進行について確認し、葬儀社や手伝いをお願いする方と連携し、葬儀全体の監督として事前に決めた通りに進行出来ているかを確認する必要があります。逆に弔辞の依頼や弔電の選択など、遺族でなければ出来ない準備もありますのでしっかりと段取りをする事が必要です。
葬儀当日には様々な場面での挨拶が必要になり重要な役割になります。参列してくれた方に感謝を伝える大切な場面となりますのでしっかりと準備をして臨むと良いでしょう。施主と喪主を兼任している場合には、葬儀前後にお寺と連絡をとるのも大切な仕事になります。お付き合いのある菩提寺がある場合は故人が亡くなった後に連絡をとり、枕経から通夜・葬儀まで日程の調整をします。菩提寺がない場合には、葬儀日程に合わせてご僧侶に紹介していただくサービスを利用するか、葬儀社に相談すると良いでしょう。
依頼する葬儀社の選定は喪主が中心となって決定します。先に述べた通り、亡くなった病院や施設に紹介された葬儀社に依頼する事も可能ですが、その場合には葬儀費用が高額になってしまうことが多いので注意が必要です。

喪主(施主)の決め方

喪主と施主において、どの立場の人が務めるものなのかは厳密に決まっている訳ではなく血縁関係の深い順に決めていくのが一般的です。家族構成に合わせて決めても問題はありません。しかし、喪主を選ぶ際に最も影響力を持つのは故人の遺言で、遺言で喪主の指定がある場合にはそれ従い喪主を決める事になります。遺言に指定がない場合には一般的な慣習では故人の配偶者が喪主になります。昔は家督を継ぐという意味から故人の後継者の方が喪主を務めていましたが、近年ではその意識が低下している事や家族構成などの変化から、故人の配偶者が喪主を務める事が多くなってきています。
配偶者が何らかの事情で喪主を務める事が困難な場合もあります。その際には血縁関係の深い方から優先されていきます。親族の続柄を血縁関係の深い順に並べると、長男>次男以降直系の男子>長女>長女以降直系の女子>故人の両親>故人の兄弟姉妹となります。また、配偶者や血縁者がいない場合には知人や友人・入所していた介護施設の代表者などが喪主を務める場合もあります。この場合には友人代表もしくは世話人代表と呼ぶのが一般的です。
喪主は必ずしも一人である必要はありません。法律で祭祀継承者は一人と定められていますが、喪主については特に決まりはなく喪主と施主を同じ人が務めても問題はありませんし、先に述べた喪主と施主が異なる場合には分けて立てると良いでしょう。葬儀費用を複数人で負担する場合などは喪主のみで施主を立てない場合もあります。


喪主挨拶の機会

喪主挨拶の機会についてはお通夜と葬儀・告別式の場合では挨拶する機会も変わってきます。葬儀の場合であれば具体的には「ご僧侶が到着した時・お布施を渡す時・会葬者に対して受付をする時・出棺時・精進落としの席での開式・閉式時」です。お通夜での挨拶は具体的な機会は「僧侶を迎える時受付にて・参列者をお迎えする時・通夜終了時・通夜ぶるまい開始時・通夜ぶるまい終了時」となります。ただし、通夜ぶるまいの席では開始の挨拶で献杯の音頭を他の方へお願いする場合もあります。
挨拶の機会について改めて考えると、こんなにも挨拶する場面があるのかと不安に思う方もいらっしゃるかと思いますが、挨拶は全て頭で覚えなければいけないという事はなく、故人に対する想いや参列者に対する感謝を伝える事が本来の目的なのでメモなどを見ながらでも問題ありません。自信のない方や不安を感じる方だけでなく、万が一のためにメモを用意すると安心でしょう。ただしメモを用意して安心するのではなく、事前に練習をしておきましょう。可能であれば一人ではなく、複数の人前で実際に声を出して練習しておくと更に安心です。その際に実際に読む予定の文章も他の方に見て貰い気になる点がないか聞いておくと良いでしょう。練習をしておくと、メモの字面のみを追うのではなくより気持ちが伝わるように読みあげが出来る事でしょう。

挨拶をする際の注意点

実際に挨拶をする場面でもマナーや注意点がいくつかありますのでご紹介致します。まず挨拶の長さですが、心に響く簡潔な文章が望まれます。喪主や遺族の方は一番悲しみに暮れる立場なのですから負担を軽くする為にも長くなりすぎない挨拶を考えましょう。ただし、逆に短すぎるのも失礼となるので開始時と終了時の挨拶は三分程度に収めるのが理想です。次にどんな内容を話せば良いのかという事ですが、まず喪主として忙しい中を参列くださった会葬者の方と葬儀を手伝ってくれた方へ感謝の気持ちを伝えるのは必須です。その中で故人が生前お世話になった事に対する感謝の言葉を故人の代わりに述べましょう。そして喪主を務める自分と故人との関係をはっきりさせる内容と共に可能な限り故人との思い出に残る話や故人から学んだ教えなどを盛り込みましょう。その流れで故人の遺志を継いで自分が一族を支えていく決意を伝え、これからも変わらぬ遺族への支援をお願いする旨を伝え結びます。この際には忌み言葉を使用していないか気を付けるようにしましょう。